2025.12.15

  • コラム

今年も「植林会」を開催しました。

戻り苗とは

「MODRINAE(以下、戻り苗)」は、ご自身でどんぐりから育てた苗木を、森へ戻すことで、森づくりに参加できるプロダクトです。
ご自宅で育った苗木が、やがて森の一部となり、次の命へとつながっていく。
木と人の循環に、より多くの方が参加できる未来を目指しています。

今年で3回目となる植林会

今年も、全国各地から多くの方にご参加いただき、植林会を開催しました。
植林会の実施は今年で3回目。たくさんの方のご協力のもと、少しずつ森が育っています。

年に一度のこの植林会は、育てた苗木を森へ戻す大切な日。そして、一つの節目でもあります。

遠い和歌山県まで足を運んでくださった皆さまに、
森のこと、植物のこと、より多くを知っていただき、たくさんの思い出を持ち帰っていただけるよう、
植林以外にもさまざまなコンテンツも併せて開催しています。

今回、初めて内容に組み込んだのは、山主さんの案内による森歩き。

中央:今回の案内人、千品さん。先祖代々受け継がれてきた森をご紹介いただきました。

向かったのは、先祖代々大切に管理されている「千品山」。
山主である千品さんが、先代から引き継ぎ管理をしている広大な森です。
千品さんは、暮らしと森の関係を体感してもらうため、自身の山を子供たちから企業の皆さんまで広く、拓いておられます。

そんな千品さんに、森が持つ様々な魅力についてお話しいただきました。

森と人の長い歴史を体感する。

森歩きの最初は、ストレッチから。
真っ直ぐな針葉樹のように、ぐーっと伸びて、怪我をしないように準備体操をします。
森の空気が心地よく、まだ出会って間もない参加者の皆さんの間にも柔らかい空気が流れ始めます。

森を歩き始めるとすぐ、千品さんが足を止めます。
取り出したのは、一冊の古い本。

先祖代々受け継がれてきたもので、
今では読むことのできない筆文字で、当時の作業の記録が残されています。
とても貴重な資料を前に、参加者の皆さんも興味深そうに覗き込んでいました。

この森が、長い時間をかけて、人の手によって大切に守られてきた場所だとわかります。
皆さんの苗木が戻る「戻り苗の森」も数十年、数百年後の人々がその軌跡を振り返り、
思いを受け取れるような場所にしていきたいと考えています。

そんな未来を参加者の皆さんにも感じていただきたいと、今回、千品さんに案内をお願いしました。

千品さんの森は広大で、1日ではすべてを見て回ることはできません。
その中から、木の面白さや森の心地よさを感じられる場所を選び、参加者の皆さんと巡りました。

森あるきの最中にはどんぐりを見つけ、みんなでウバメガシを探しました。

少し掘ると葉の匂い。もっと掘ると酸っぱい匂い。落ち葉が分解される過程を身体で感じます。

6mの丸太に耳を近づけてみると、向こう側で叩いた音が大きく聞こえてきます。

写真で紹介したもののほかにも、切り株に腰掛けてお弁当を食べたり、薪割りを体験したりと、
五感をフルに使ったさまざまな体験をさせていただきました。

初めての経験に、参加者の皆さんがとても興味を持ってくださり、私たち自身も嬉しく、
こうした多様な体験ができる森の場づくりをしていきたいと、思い直す時間となりました。

お別れの時。メインである植林体験へ。

午後からは、いよいよ植林です。
植林を行うのは、和歌山県田辺市・大内川エリアにある「戻り苗の森」。

戻り苗として3拠点目となるこの森は、歩道のそばを透き通った小川が流れ、
もみじやさくらが自生する、自然豊かな場所です。

数年前に植林が行われたものの、鹿の食害によって針葉樹が失われてしまったこの森を、
皆さんの苗木で再生することが、今回の植林の目的です。

一般的な植林体験では、植えやすさを重視して場所を選ぶことが多いのですが、
戻り苗の森づくり拠点は、「森に戻す必要がある場所」を基準に選定しています。
そのため、場所によっては険しいエリアも。

※どのような方でもご参加いただけるよう、歩きやすいエリアもご用意していますので、来年以降に参加を検討されている方もご安心ください。

「ここを登るんですか…」と言わんばかりの不安げな表情の参加者の皆さん
今はまだ、木が生えていない「戻り苗の森 大内川」

今回は、参加者の皆さんが「登ってみたい」とおっしゃってくださったので、
全員でゆっくりと歩みを進めながら、急な斜面に挑戦しました。

そしていよいよ、苗木とのお別れの時。
小さなどんぐりから芽が出て、喜びや不安を重ねながら2年間を過ごし、
ついにこの場所に戻すことができます。

「大きくなりますように」と願いを込めて植えていきます。

そしていよいよ、苗木とのお別れの時です。
小さなどんぐりから芽が出て、喜びや不安を重ねながら過ごしてきた2年間を経て、
ついにこの森へと戻します。

「大きくなりますように」と願いを込め、一つひとつ大切に植えていきました。

スコップで掘り、そっと苗木を置き、土を戻す。
どれもシンプルな作業ですが、苗木はここから何十年という時間を、
この場所で過ごしていくことになります。

来年も開催します。

今年、植林会に参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。

遠い場所から和歌山に足をお運びいただき、大切に植林される姿を見て、
私たちも、森づくりに関わってくださる方の姿や想いを知ることができます。
そして、植えられた苗木たちへの気持ちも、一層強くなります。

戻り苗の取り組みは、これからも続いていきます。
また来年、皆さまと森でお会いできることを楽しみにしています。